調達戦略の進め方と成功事例

目次

調達戦略とは、製品開発に必要な部材や製造パートナーを、適切なQCDS(品質・コスト・納期・サービス)で確保するための計画を指します。新規事業やハードウェア開発における調達は、単に「完成品を買う」ことではなく、自社のアイデアを形にするための「適切な製造ライン(サプライチェーン)を設計すること」に他なりません。ここでは、事業担当者が知っておくべき「調達戦略の進め方」と、実務において留意すべきポイントについて解説します。

調達戦略の成功実例

グローバル企業やスタートアップがどのように調達のリスクを回避し、価値を向上させているかの実例を紹介します。

CASE1:
設計部門との連携による代替調達戦略

ダイキン工業は、銅の価格高騰や供給リスクに対応するため、素材を「銅からアルミへ切り替える」材料置き換えを実行し、コストダウンと安定調達を両立。同時に「部品の共通化・標準化」を推進し、特定の専用部材に依存しない設計アプローチを徹底しています。

さらに、タイムリーかつ合理的な価格で調達を行うため、「調達先の複数化・地域的分散」を実行。サプライヤーを評価・選定する際は、「代替が困難か」「取引金額の規模」「重要な取引品目か」という3つの独自基準を設け、強固なサプライチェーンを築いています。

CASE2:
フロントローディングによる
コスト削減

防災・気象テックベンチャーであるRainTech社は、量産試作に向けて「より低価格で精度の高い雨量計」の開発を目指していました。しかし、過去にモノづくりの知見がなく、評価基準や目標値の設定ができないため、必要な機能への分解(要件定義)すらできず、自社に合う試作会社も分からないまま構想段階で停滞していました。

そこで、製品開発コンサル会社が構想段階からプロジェクトに参画し、評価項目や基準を整理。さらに、少数生産ながら量産可能なメーカーを選定・提案しました

設計の見直しから適切なサプライチェーンの構築までを一貫して行った結果、量産試作段階において1台あたり約2.2万円もの機能原価を削減する大幅なコストダウンを達成しました。

※自社調べによる

失敗しない調達・
サプライチェーン構築のポイント

要求仕様の整理・定義

サプライヤーの選定に入る前に、まずは自社の要求仕様(デザインや機能)を、メーカーが製造できる具体的な技術要件に整理し、落とし込む作業を行います。

この要件定義が曖昧なままだと、そもそも発注者とメーカーの間で「最終的にどのようなモノを作るのか」という認識を合わせることができません。共通の認識ができない状態では、その工場が本当に自社の求める品質やコスト要件を満たせるのかを正しく評価・見極めることが不可能になります。結果として、製品の特性に適したサプライチェーンを構築できず、市場での競争力を大きく損なう事態を招きます。自社の求める物理的な制約を明確に定義し、メーカーと正確な認識合わせができる状態を作ることが、競争力のある調達基盤を築くための第一歩です。

的確な工法・メーカーの選定

製品の要件を満たす「適切な工法」を導き出し、それを高いレベルで実現できるサプライヤーを比較検討・決定するプロセスです。

製品を形にするための工法には様々な選択肢があり、生産予定数や目標コストによって適した方法は変わります。量産開始後に品質のバラツキや納期遅延などのトラブルに直面するリスクを防ぎ、安定した調達を実現するためには、まず自社の要件に合致する「適切な工法」を見極め、それを叶えられるメーカーを熟練の視点で選び抜くことが不可欠になります。

さらに、表面的な設備能力だけでなく、「継続的に品質を担保するためのマネジメント体制が機能しているか」までを総合的に評価する目利きが重要です。

実行マネジメントとリスク分散

優れたメーカーを目利きし、契約を結ぶことはゴールではありません。量産開始後も、歩留まり(良品率)の維持や継続的な原価低減に向けて、メーカーと協調して改善を進める「実行マネジメント」が不可欠です。

同時に、特定の1社や特定の地域に供給を100%依存していると、災害や地政学的な要因でその工場が稼働停止した際、自社の製品供給も完全にストップしてしまいます。サプライヤーとの信頼関係を構築しつつ、不測の事態に備えたセカンドソース(代替調達先)の確保など、サプライチェーン全体を適正化し続ける実行力が求められます。

調達の失敗リスクを
回避するための考え方

調達で大きな失敗をする理由のひとつが、要求仕様が曖昧なまま、調達やサプライヤー選定を進行しようとすることにあります。サプライヤーとの認識をすり合わせられない状態では、製品特性に適切なサプライチェーンを構築できず、結果として原価が高騰して製品の競争力を落としたり、市場投入が遅れて大きな機会損失を招くことにつながりかねません。

その失敗を防ぐためのベストプラクティスが、「開発購買」と呼ばれるアプローチ。これは、モノづくりの知見を持つ調達担当者が、企画や基本設計の初期段階からプロジェクトに参画する手法です。要件定義の段階から、調達・製造側の知見をフィードバックしておくことで、原価低減アプローチや、工法・メーカーの監査・選定などを通じて、より確実で安定した量産体制の構築を目指すことができます。新規事業のケースなどで、社内に要件定義のノウハウや目利きが不足している場合は、製造の知見を持つ専門家を活用することも有効な選択肢となるでしょう。

当メディアでは、量産までを見据え、「技術はあるが活かせない」「モノづくりの経験がない」といった製品開発の課題に対し、メーカー選定やサプライチェーン構築の知見を持つ製品開発コンサル会社を比較紹介しています。パートナー選びの参考に、ぜひお役立てください。